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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

K.O.さんへの手紙

             ≪大岩 一美さんへの便り≫

         ハ~~~イ!元気ですか?昨日19日、日本大使館にて貴

       方からの二通の手紙を一度に受け取る事が出来ました。ニュ

       ーデリー宛に出してくれてった手紙も、京都の絵葉書も後か

       ら来てた会長に拾われて、無事イスタンブールで受け取る事

       が出来ましたのでご安心を。

         イスタンブールから陸ずたいで北上する予定でいました

       が、ビザを取ったりするのに日数とお金がかかる為、トルコ

       を南下しイズミールと言う街に行き、そこからエーゲ海を泳

       ぎながら?島を経由してギリシャに入国した次第です。

         アテネには、この18日に無事到着しました。

       明日にでも、ゴールであるパルテノン神殿に登って見よう

       と・・・そのときは考えていたのですが、シンタグマ広場に

       て偶然街をうろついている仲間にバッタリ逢い、昨日ヒッチ

       ハイクカー達のたまり場になっている”Joseph ・House”に

       引っ越してきたばかりです。

         話によると、パルテノン神殿には、冷たい風が吹きすさ

       び寒すぎるため、ゴール係りを引き受けるやつがいなくて、

       誰も行っていないとのこと。

       閉会式の24日までには、まだ数日ありますがすでに会長を含

       め、留守部隊である会長の奥さんや子供達、そして奥さんの

       妹も無事18日にアテネに到着しているようです。

       後三名の到着を待つばかりとなっています。

         この”ジョセフ・ハウス”は、自炊が出来るため、毎夜

       賑やかな夕食会が開かれており、今までの孤独な寂しい夜と  
       は大違い・・・楽しい毎日を過ごしています。

       この手紙が日本に着く頃には、無事閉会式も終わり、それぞ

       れ思い思いに旅立っていく事でしょう。

       俺もこれから冬のヨーロッパをぐるりと一周して、第二の目

       的地であるロンドンに入る予定です。

       冬服を準備してこなかった俺にとっては、冬のヨーロッパは

       とてつもなく厳しいものになるでしょう。

       もともとこの旅は、厳しいものを求めての旅でしたが、目的

       の半分を消化し、これからまた何が起こるか全く予想も出来

       ない状況です。

       しかし今は、インド・中近東を踏破してきた自信が身体中を  
       支配しています。

       これで何とか生きて帰れる、生きて日本の土を踏める気がし  
       てきました。

         まだ日本からの小包が届いていないので、ここ当分はア

       テネでのんびりするつもりでいます。

       これからも長い旅が続くでしょう。

       ところでイスタンブールへ送られてきた、貴方からの手紙を 
       受け取り少々驚いているところです。

       ショックは隠しきれませんが・・・・・やはり・・「おめで

       とう!」と言うべきなのかな?

       まさか旅の途中で、このような手紙を受け取ろうとは思いも

       よりませんでした。

       ・・・・が、貴方の選択は間違っていないのかもしれません

       ね。

       女の幸せと言うものは、案外そんなところにあるのかも知れ 
       ません。

       旅に出る前に立ち寄ったときに見た、貴方を思うとちょッ

       と・・・以外でした。

       まんまとしてやられましたね。

         それにしても・・・・・おめでとう。

       これでは、どうしても来年の夏までには、日本に帰らなけれ

       ばならなくなってしまいましたね。

       「来るな!」と言われても、貴方の結婚式には参加させて貰

       いますよ。

       貴方にとっても、彼にとっても、俺はどっちも大切な友人で

       あったと思うからです。

         これからの俺の旅は、二人のために祝いものを探す旅に

       なりそうです。

       俺にとっては、また厳しい条件が増えたようです。

       身が引き締まって、良いのかも知れませんが。

       ここアテネでは、まだ夏のような日差しが照りつけていま

       す。

       風がなければ、汗ばむほどの気候で、秋の気配もまだまだと

       言うところ。

       正直言って、本当にこの旅は驚きの連続でした。

       二ヵ月半があっという間に過ぎ去ってしまったように感じて

       います。

       こんなにも自分を夢中にさせてくれた旅は、今まで経験する

       事が出来なかったものです。

       学生時代から憧れてきた、シルクロードよりいくらか南では

       ありますが、インド・中近東を経由して、本当に良かったと

       思っています。

       これからの俺の人生も、この旅のようであったらと思ってい

       ます。

         インドに入国する前から伸ばし始めた、口ひげも顎鬚

       も、随分と立派になってきました。

       日本にいた時の自分とは違うんだと言う意味で、伸ばし始め

       たのですが、今では少々気に入っています。

       パキスタンでやられた、南京虫の痕も大分消えかかっていま

       す。

       二つとも日本へ帰るまでは、残しておきたいものなのです

       が、南京虫の痕はもうダメなようです。

         日本の秋は、台風による被害のため、散々だったようで

       すね。

       でもこれからは、食欲の秋・スポーツの秋・・・・・に秋祭

       りと、すばらしい季節がやって来ると思うとうらやましい限

       りですね。

       エーゲ海の海も暑い太陽の陽射しも、白い大理石の建物も赤

       く輝く屋根も、田舎の秋祭りにかなうものではありません。

       もう俺は、七年も遠ざかっているのです。

         来年は是非、貴方の結婚式に参列させていただき、秋祭

       りに身を投じてみたいものです。

       それまで何とか、異国の地で頑張って、貪欲にあらゆるもの

       を吸収していきたいと考えている所です。

       ヨーロッパにいる意味がなくなったとき、俺は素直に帰国す

       るでしょう。

       その日が来るのは、案外早く訪れるかも知れません。

       これから、要所要所で、また貴方に会える時を楽しみにして

       います。

         それじゃあ・・・また!

                    20.10.76’Athensにて

                            K.O.さんへ



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